Google広告データマネージャーとは
Google広告データマネージャー(Google Ads Data Manager)は、2023年10月にGoogleが発表したファーストパーティデータ管理ツールです。ポイント&クリック操作でCRMやクラウドストレージなどの外部データソースとGoogle広告を直接つなぎ、コンバージョン計測やオーディエンスターゲティングに活用できます(出典: Google広告ヘルプ)。2024年初頭に一般提供が開始され、2025年12月にはData Manager APIも正式リリースされました(出典: Google Ads Developer Blog)。
サードパーティCookieの段階的廃止が進む中、広告主が自社で収集したファーストパーティデータをいかに広告運用へ反映させるかが課題になっています。データマネージャーは、エンジニアのサポートなしにマーケター自身がデータ接続を管理できる点が特長です。タイの不動産大手Sansiri社では、ファーストパーティデータとリードの拡張コンバージョンを組み合わせた結果、優良リード数が43%増加し、獲得単価も48%低減しています(出典: Think with Google)。
なお、Salesforceのレガシー連携は2025年5月31日に廃止されており、既存ユーザーはデータマネージャー経由への移行が必須です(出典: Google広告ヘルプ)。
Cloud Storageをデータソースに選ぶメリット
データマネージャーは16種類以上のデータソースに対応しています(出典: データマネージャー ヘルプ)。代表的な選択肢を分類すると次のとおりです。
| 分類 | データソース | 向いている用途 |
|---|---|---|
| クラウドストレージ | Google Cloud Storage / Amazon S3 | 大量データの定期バッチインポート |
| ファイル転送 | SFTP / HTTPS | 既存ETLパイプラインとの連携 |
| Google製品 | BigQuery / Google スプレッドシート / Google ドライブ | GCP環境内でのデータ活用 |
| CRM・SFA | Salesforce / HubSpot / Zoho CRM / Pipedrive | 顧客管理データの自動同期 |
| データウェアハウス | Snowflake / Amazon Redshift | 大規模分析基盤からの連携 |
| データベース | MySQL / PostgreSQL / Oracle | 既存DBからの直接取り込み |
| EC・その他 | Shopify / ActiveCampaign | ECサイト・MAツールとの連携 |
Cloud Storage(GCS)は、大量の顧客リストやコンバージョンデータを定期的かつ自動的にGoogle広告へ取り込みたいケースに適しています。既にGoogle Cloud Platform(GCP)を利用している組織であれば、バケットにCSVやTSVファイルを配置するだけで連携が完了するため、既存のデータパイプラインとの親和性が高い点も見逃せません。
接続前に確認する3つの前提条件
Cloud StorageとGoogle広告を接続する前に、以下の要件を満たしているか確認が必要です。
1. GCSバケットへのIAMアクセス権
接続先のGCSバケットに対して storage.buckets.setIamPolicy を委任できるIAMロールが必要です。具体的には「Storage管理者(roles/storage.admin)」ロール、または同等のカスタムロールを持つGCPアカウントでの操作が求められます。
なお、データの取り込み自体には読み取り権限のみで十分です。初回の接続セットアップ時に書き込み権限が求められるのは、データマネージャーのサービスアカウントへ自動的にアクセスを付与するためです。
2. Google広告の管理者権限(初回のみ)
GCSバケットとGoogle広告を初めて接続する際には、Google広告アカウントの管理者(Admin)権限が必要です。2回目以降の接続や設定変更では、標準ユーザー権限で操作できます。
3. 均一なバケットレベルのアクセス設定
Google広告のデータマネージャーは、「均一なバケットレベルのアクセス(Uniform Bucket-Level Access)」が有効化されたバケットのみサポートしています。さらに、バケットへのアクセスを管理するIAMポリシーがv3以降であることが条件です。
特定のオブジェクトだけにアクセスを制限したい場合は、均一なバケットレベルのアクセスを有効にしたうえで、データマネージャーのサービスアカウントに対してIAM条件を設定します。
接続手順:ステップごとの設定ガイド
ステップ1. データソースへの接続を開始する
- Google広告の管理画面で [ツール] → [データマネージャー] を開きます
- [+ データソースを接続] をクリックします
- データソースの一覧から 「Google Cloud Storage」 を選択します
- 接続の名前を入力します(管理用の任意の名前)
- GCSバケットのパス(
gs://バケット名/フォルダ名/ファイル名.csv)を入力します - 初めて接続するリソースの場合はアクセス付与の確認アラートが表示されるため、 [適用] をクリックしてIAM権限を付与します
- [次へ] をクリックして進みます
ステップ2. ユースケースを選択して接続を完成する
接続を作成する段階で、データの活用目的(ユースケース)を指定します。選択肢は主に2つです。
ユースケースを「今すぐ適用」する場合:
接続作成と同時にデータの用途を決めます。対応するユースケースとして「カスタマーマッチ」と「オフラインコンバージョンインポート(リードの拡張コンバージョン含む)」があります。
ユースケースを「後で適用」する場合:
まずデータソースとの接続だけを完了し、具体的な用途は後日設定します。テスト接続や段階的な導入に適しています。
最後にフィールドマッピングを実施します。GCSファイル内のカラム名と、Google広告側の「接続先フィールド」をプルダウンから選んで紐づけます。マッピング完了後、 [保存して次へ] → [完了] の順にクリックすると接続が有効になります。
ユースケース別の具体的な設定方法
カスタマーマッチ
カスタマーマッチは、自社の顧客リスト(メールアドレス・電話番号・住所など)をGoogle広告にアップロードし、該当ユーザーやその類似ユーザーへ広告を配信する機能です。
Cloud Storageを使ったカスタマーマッチの設定手順は次のとおりです。
- Google広告の [ツール] → [共有ライブラリ] → [オーディエンスマネージャー] を開きます
- [+] ボタンから [顧客リスト] を選択します
- データソースとして 「Google Cloud Storage」 を選びます
- GCSバケットのファイルパスを指定します
- フィールドマッピングでメールアドレスや電話番号などをGoogle広告の対応フィールドに割り当てます
- 更新スケジュール(1回限り・定期更新)を設定します
- [保存] をクリックして完了します
CSVファイルのフォーマット例(カスタマーマッチ用):
Email,Phone,First Name,Last Name,Country
user@example.com,+819012345678,太郎,山田,JP
データマネージャーにはSHA-256による自動ハッシュ化機能が組み込まれています。メールアドレスや電話番号などの個人情報(PII)は、送信時に自動的にハッシュ化されるため、平文のまま送信しても問題ありません。事前にハッシュ化したデータを送る場合は、フィールド名の先頭に hashed_ を付与します。
オフラインコンバージョンインポート
実店舗での購入や電話問い合わせなど、オンラインでは計測できないコンバージョンをGoogle広告に取り込む機能です。GCLIDまたは拡張コンバージョン用のユーザーデータと紐づけることで、広告の成果を正確に測定できます。
設定手順は次のとおりです。
- Google広告で [目標] → [概要] → [+ 新しいコンバージョンアクション] を選択します
- [インポート] を選び、ソースとして 「Google Cloud Storage」 を指定します
- コンバージョンアクション名と値を設定します
- GCSバケット内のファイルパスを入力します
- フィールドをマッピングします(GCLID、コンバージョン日時、コンバージョン値など)
- 更新スケジュールを設定します
CSVファイルのフォーマット例(GCLID方式):
Google Click ID,Conversion Name,Conversion Time,Conversion Value,Conversion Currency
abc123xyz,購入完了,2026-02-01 14:30:00+09:00,15000,JPY
広告クリックから90日以内のコンバージョンがインポート対象です。90日を超えたクリックに紐づくコンバージョンは取り込まれません。なお、リードの拡張コンバージョンの場合はクリックから63日以内が対象です。データの反映には最大24時間かかる場合があるため、少なくとも日次でのアップロードが推奨されています(出典: Google広告ヘルプ)。
リードの拡張コンバージョン
リードの拡張コンバージョンは、GCLIDに加えてメールアドレスや電話番号などのユーザー識別情報を使い、広告クリックとオフラインコンバージョンの紐づけ精度を高める仕組みです。
Cloud Storageから拡張コンバージョン用データを取り込む場合も、基本的な手順はオフラインコンバージョンインポートと同じです。異なるのはCSVファイルに含めるフィールドで、GCLID列に加えてメールアドレスや電話番号の列を追加します。
Google Click ID,Email,Conversion Name,Conversion Time,Conversion Value
abc123xyz,user@example.com,資料請求,2026-02-01 10:00:00+09:00,5000
IAM権限の詳細設定
Cloud Storageの接続で最もつまずきやすいのがIAM権限の設定です。必要な権限とその付与方法を整理します。
必要なIAMロールと権限
| 操作 | 必要な権限 | 推奨ロール |
|---|---|---|
| 初回接続セットアップ | storage.buckets.setIamPolicy | Storage管理者(roles/storage.admin) |
| データ読み取り | storage.objects.get, storage.objects.list | Storageオブジェクト閲覧者(roles/storage.objectViewer) |
| バケット一覧表示 | storage.buckets.list | Storageブラウザ(roles/storage.objectViewer) |
データマネージャーのサービスアカウントを確認する方法
Cloud StorageのIAM設定では、データマネージャー専用のサービスアカウント(メールアドレス)をプリンシパルとして登録する必要があります。このサービスアカウントはGoogle広告が自動生成するもので、ユーザーが自分で作成するものではありません。
確認手順:
- Google広告の管理画面で [ツール] → [データマネージャー] を開きます
- [+ データソースを接続] をクリックし、 「Google Cloud Storage」 を選択します
- GCSバケットのパスを入力して [次へ] に進むと、アクセス付与のアラートが表示されます
- このアラート内にデータマネージャーのサービスアカウントのメールアドレスが記載されています
- 表示されたメールアドレスをコピーし、GCP側のIAM設定で使用します
既存の接続からサービスアカウントを確認する場合:
既にCloud Storageとの接続が存在するときは、データマネージャーの [接続済みのサービス] から該当の接続をクリックすると、接続詳細画面でサービスアカウントのメールアドレスを確認できます。
GCP側のIAMページから確認する場合:
Google Cloud Consoleの [IAMと管理] → [IAM] を開き、 「Google提供のロール付与を含める」 チェックボックスをオンにすると、Googleが自動作成したサービスエージェント(サービスアカウント)が一覧に表示されます。データマネージャー用のアカウントは @gcp-sa-googleads.iam.gserviceaccount.com のドメインを含む形式です。
権限付与の手順
- Google Cloud Console にログインします
- 対象プロジェクトの [IAMと管理] → [IAM] を開きます
- [+ アクセスを許可] をクリックします
- 「新しいプリンシパル」 に上記の手順で確認したデータマネージャーのサービスアカウントのメールアドレスを入力します
- ロールとして 「Storage管理者」 を選択します(初回セットアップ用)
- [保存] をクリックします
初回の接続完了後は、セキュリティの観点からロールを「Storageオブジェクト閲覧者」に変更することを推奨します。
均一なバケットレベルのアクセスを有効にする方法
- Google Cloud Consoleで [Cloud Storage] → [バケット] を開きます
- 対象バケットの名前をクリックします
- [権限] タブを選択します
- 「アクセス制御」セクションで 「均一」 に切り替えます
一度「均一」に設定すると90日経過後に元に戻せなくなるため、既存のACL(アクセス制御リスト)に依存するワークフローがないか事前に確認してください。
エラー発生時の対処法
接続やデータ取り込み時に発生しやすいエラーと、その解決策をまとめます。
「権限が不足しています」エラー
原因: IAMロールの付与が不足している、または均一なバケットレベルのアクセスが無効です。
対処法:
- GCPコンソールで対象バケットのIAMポリシーを確認し、データマネージャーのサービスアカウントに適切なロールが付与されているか検証します
- バケットのアクセス制御が「均一」になっているか確認します
「ファイルが見つかりません」エラー
原因: 指定したGCSパスが正しくない、またはファイルが存在しません。
対処法:
gs://バケット名/パス/ファイル名.csvの形式でパスが正確か確認します- ファイルの拡張子が
.csvまたは.tsvであるか確認します - バケット名やフォルダ名に全角文字が含まれていないか確認します
「フィールドマッピングエラー」
原因: CSVファイルのヘッダー名とGoogle広告側のフィールドが一致していません。
対処法:
- CSVのヘッダー行がGoogle広告のテンプレートに沿っているか確認します
- 余分な空白やBOM(Byte Order Mark)が含まれていないか確認します
- 文字エンコーディングがUTF-8であることを確認します
データが反映されない場合
- インポートスケジュールが正しく設定されているか確認します
- 広告クリック日から90日以内(拡張コンバージョンは63日以内)のデータであることを確認します
- Google広告の管理画面 [ツール] → [データマネージャー] で接続ステータスが「有効」になっているか確認します
CSVファイル作成時のベストプラクティス
Cloud Storage経由でデータを取り込む際は、ファイルの品質がインポートの成否を左右します。
ファイル仕様
- 対応フォーマット: CSV(カンマ区切り)またはTSV(タブ区切り)
- 文字エンコーディング: UTF-8(BOMなし推奨)
- 改行コード: LF(Unix形式)推奨。CRLFも許容
- ヘッダー行: 必須。1行目にフィールド名を記載
データ品質のチェックポイント
- メールアドレスは小文字に統一し、前後の空白を除去します
- 電話番号はE.164形式(例:
+819012345678)を使用します - 日時は
YYYY-MM-DD HH:MM:SS+09:00のISO 8601形式で記載します - 空のフィールドはカンマを残しつつ値を空にします(行ごとのカラム数を統一)
- 1ファイルあたりのサイズが大きすぎる場合は分割してアップロードします
他のデータ接続方法との使い分け
Cloud Storage以外にも、Google広告にファーストパーティデータを取り込む手段があります。運用体制やデータ量に応じて選択してください。
| 判断基準 | Cloud Storage | 手動アップロード | API連携 |
|---|---|---|---|
| データ量 | 大(数万〜数百万件) | 小〜中(数千件まで) | 大 |
| 更新頻度 | 定期自動 | 都度手動 | リアルタイム〜準リアルタイム |
| 必要な技術力 | GCPの基礎知識 | 不要 | API開発スキル |
| 初期構築コスト | 中 | 低 | 高 |
| 運用コスト | 低(自動化可能) | 高(手作業) | 低〜中 |
| 適したチーム | 社内にGCPエンジニアがいる | 少人数の広告運用チーム | 開発リソースがある組織 |
GCPを既に契約している場合はCloud Storageが最も費用対効果の高い選択肢です。GCPの知識がなく少量のデータだけを扱う場合はGoogleスプレッドシートや手動アップロードが手軽です。
2025年12月に正式リリースされたData Manager APIを使えば、プログラムからのデータ投入も可能になりました。1リクエストあたりオーディエンス最大10,000件、コンバージョン最大2,000件を処理でき、RESTとgRPCの両方に対応しています(出典: Google Ads Developer Blog)。自社の開発リソースがあり、リアルタイム性が求められるケースではAPI連携が適しています。
よくある質問(FAQ)
Q. Google Cloud Storageとは何ですか?
Google Cloud Storage(GCS)は、Google Cloud Platform上のオブジェクトストレージサービスです。デジタルデータをGoogleのサーバーに保管でき、データのホスティング・管理・保護はGoogleが担います(出典: Google Cloud)。データマネージャーとの連携では、CSVやTSVファイルをGCSバケットに配置し、Google広告が定期的に読み取る仕組みで運用します。
Q. データマネージャーの利用に追加費用はかかりますか?
データマネージャー自体の利用は無料です。ただし、Cloud Storageのストレージ料金やデータ転送料金はGCPの課金体系に従って発生します。
Q. 接続後にデータソースのファイルを更新したら自動で反映されますか?
接続設定時に更新スケジュール(毎日・毎週など)を指定できます。スケジュールに従ってGCSバケット内のファイルが自動的に読み取られ、Google広告へ反映されます。手動で即時更新をトリガーすることも可能です。
Q. 複数のGCSバケットを1つのGoogle広告アカウントに接続できますか?
接続可能です。データソースごとに個別の接続を作成すれば、異なるバケットやフォルダから別々のデータセットを取り込めます。
まとめ
Google広告データマネージャーとCloud Storageの連携は、ファーストパーティデータを広告運用に活かすための実用的な手段です。初回のIAM権限設定さえ完了すれば、その後はCSVファイルをバケットに配置するだけで、カスタマーマッチやオフラインコンバージョンインポートが自動化されます。
設定のポイントをまとめると以下の3点です。
- 事前準備: 均一なバケットレベルのアクセスを有効にし、
storage.buckets.setIamPolicy権限を持つロールを確保する - 接続手順: データマネージャーからCloud Storageを選択し、バケットパス入力 → ユースケース選択 → フィールドマッピングの順に進める
- 運用: CSVファイルはUTF-8・ISO 8601日時形式で統一し、更新スケジュールを設定して自動取り込みを実現する
公式ドキュメント(Google Cloud Storage - データマネージャー ヘルプ、データソースを接続する)も合わせて参照してください。