記事を量産してもSEO評価が上がらない原因

「100記事書いたのに検索順位が上がらない」――こうした悩みを抱えるサイト運営者は少なくありません。原因の多くは、個別記事がバラバラに存在し、サイト全体としてのテーマの専門性をGoogleに伝えられていないことにあります。

トピッククラスターとは、1つの中心テーマ(ピラーページ)と、それを補足する複数の関連記事(クラスターページ)を内部リンクで結びつけ、サイト全体の専門性・網羅性を検索エンジンに示すコンテンツ設計手法です。2017年にHubSpotがこのモデルを提唱・体系化し、自社ブログを再編成したことで広く知られるようになりました。出典: HubSpot Blog

Googleは2023年5月に「トピックオーソリティ」というランキングシステムの存在を公式に解説しています。これはニュースサイト向けの仕組みですが、「特定トピックに対する情報源の専門性を評価する」という考え方は、すべてのWebサイトのSEOに通じる原則です。出典: Google Search Central Blog

トピッククラスターを構成する3つの要素

トピッククラスターは、次の3つの要素で成り立っています。

ピラーページ(Pillar Page)

テーマ全体を広くカバーする中心的なページです。たとえば「コンテンツマーケティング」というテーマであれば、定義・手法・効果・ツールなど主要トピックを1ページで概観します。検索ボリュームが比較的大きい上位概念のキーワードを狙うことが多く、3,000〜5,000文字以上の長めのコンテンツになるのが一般的です。

ピラーページの役割は「入口」と「ハブ」の2つです。検索エンジンからの流入を受け止めると同時に、各クラスターページへの導線を提供します。

クラスターページ(Cluster Page)

ピラーページのテーマに含まれる個別トピックを深掘りする記事群です。上の例であれば「コンテンツマーケティング KPI」「コンテンツマーケティング BtoB 事例」などのロングテールキーワードをそれぞれ1記事で扱います。

各クラスターページからピラーページへ内部リンクを張ることで、「このページはピラーページの一部である」という関係をクローラーに伝えます。

ピラーページとクラスターページを双方向に結ぶリンクです。ピラーページから各クラスターページへリンクし、各クラスターページからもピラーページへリンクを返します。

この内部リンク構造が、クラスター全体のPageRank(リンクジュース)を循環させ、ピラーページの検索評価を押し上げる仕組みです。GoogleはPageRankを現在もコアランキングシステムの一部として使用しており、ページ間のリンク構造からページの関連性や重要性を判断しています。出典: Google Search Central - ランキングシステムガイド

サイロ構造との違い――目的・リンク方向・柔軟性を比較

トピッククラスターと混同されやすいのがサイロ構造です。どちらもサイト内のコンテンツをテーマ別に整理する点は共通していますが、設計思想に明確な違いがあります。

比較項目トピッククラスターサイロ構造
設計の起点ユーザーの検索意図(キーワード群)サイトのカテゴリ分類(ディレクトリ設計)
リンクの方向ピラーとクラスター間の双方向リンクが基本。クラスター同士のリンクも許容同一サイロ内のみリンクを許可。サイロ間リンクは原則禁止
構造の柔軟性1つのクラスターページが複数のピラーに属することも可能ページは1つのサイロにのみ所属
追加コストの大小既存記事にリンクを追加するだけで導入開始できるディレクトリ構成の変更が伴うためURL移行が発生しやすい
適したサイト規模小規模〜大規模まで段階的に拡張可能中〜大規模サイトに向いている
E-E-A-Tとの親和性テーマ単位で専門性を示しやすく、E-E-A-T向上に直結カテゴリの専門性は示せるが、テーマ横断の専門性は伝えにくい

実務上の選び方として、すでにURL構造を変更しにくい運用中のサイトにはトピッククラスターが導入しやすく、新規サイトの設計段階ではサイロ構造とトピッククラスターを組み合わせるアプローチも有効です。

トピッククラスター導入で得られる4つの効果

1. サイト全体の専門性(トピカルオーソリティ)が向上する

関連コンテンツ群が内部リンクで密に結ばれることで、Googleはサイトを「特定テーマの専門情報源」と認識しやすくなります。E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)のうち、特に「専門性(Expertise)」の評価向上に寄与します。

2. クローラビリティとインデックス効率が改善する

内部リンクの網が整備されると、Googleのクローラーがサイト内を巡回しやすくなります。特にクロールバジェット(Googleが1サイトに割り当てるクロール量)に制約のある大規模サイトでは、クラスター構造によるクロール効率の改善が検索結果への反映速度に直結します。

3. ロングテールキーワードでの流入が増える

クラスターページはそれぞれ個別のロングテールキーワードを狙うため、ピラーページ単体ではカバーしきれない多様な検索クエリからの流入を獲得できます。ロングテールキーワードは検索ボリュームこそ小さいものの、検索意図が明確でコンバージョン率が高い傾向にあります。

4. コンテンツのカニバリゼーションを防げる

同じテーマに関する記事が乱立すると、どのページを検索結果に表示すべきかGoogleが判断に迷う「キーワードカニバリゼーション」が起きます。トピッククラスターでは、各ページの役割(ピラー=包括的、クラスター=個別深掘り)が明確なため、ページ同士の競合を防ぎやすくなります。

5ステップで始めるトピッククラスター導入手順

小規模サイトでも段階的に導入できる手順を示します。まず1つのクラスターから始めて、成果を確認しながら横展開する進め方が現実的です。

ステップ1: コアトピックを1つ選定する

自社の専門領域・商材に直結し、検索ボリュームが月間500以上ある中〜大ボリュームのキーワードを1つ選びます。このキーワードがピラーページのメインキーワードになります。

選定基準は次の3点です。

  • 事業との関連性: 自社サービス・商品の購入に至る検索行動と結びついているか
  • 検索ボリューム: 月間検索数500以上が目安。Google キーワードプランナーやUbersuggestなどのツールで確認できます
  • 競合の状況: 検索結果上位10件のドメインパワーが自サイトと大きくかけ離れていないか

ステップ2: 関連キーワードを洗い出し、クラスターページを設計する

コアトピックに紐づくサブトピック(ロングテールキーワード)を20〜30個リストアップします。以下のツール・手法を組み合わせると効率的です。

  • Googleサジェスト / オートコンプリート: 検索窓にコアキーワードを入力して表示される候補を収集
  • 関連検索(検索結果ページ下部): 「他の人はこちらも検索」欄のキーワード
  • People Also Ask(他の人はこちらも質問): 質問形式のキーワードはクラスターページのテーマとして最適
  • キーワード調査ツール: Ahrefs、SEMrush、ラッコキーワードなど

リストアップしたキーワードから検索意図が重複するものを統合し、最終的に8〜15本のクラスターページ候補に絞ります。

ステップ3: ピラーページを作成する

コアトピックの全体像を1ページにまとめます。各サブトピックには概要レベルで触れ、詳細はクラスターページに譲る構成にします。

ピラーページ作成のポイントは次の通りです。

  • 3,000〜5,000文字以上で網羅的に書く
  • 各セクション内にクラスターページへの内部リンクを設置する
  • 目次(Table of Contents)を設け、ページ内ナビゲーションを充実させる
  • メインキーワードをtitleタグ、h1、メタディスクリプション、本文冒頭に配置する

ステップ4: クラスターページを作成し、内部リンクを構築する

各クラスターページを個別に作成し、以下のリンク構造を必ず設定します。

  1. クラスターページ → ピラーページ: 記事冒頭または末尾に、ピラーページへのリンクを1本以上設置
  2. ピラーページ → クラスターページ: ピラーページの該当セクションから各クラスターページへリンク
  3. クラスターページ同士: 内容的に関連が深いクラスターページ間もリンクで結ぶ

アンカーテキストは、リンク先のメインキーワードを含む自然な表現にします。「こちら」「詳細はこちら」といった意味の薄いアンカーテキストは避けます。

ステップ5: 公開後の効果を測定し、改善する

公開後は次の指標を定期的に確認し、クラスター全体の成果を追跡します。効果測定の方法は次のセクションで詳しく説明します。

効果測定のKPIと具体的な計測方法

トピッククラスターの成果を正しく評価するには、個別ページの順位だけでなく、クラスター全体のパフォーマンスを指標で捉える必要があります。

検索パフォーマンスの指標(Google Search Console)

KPI計測方法目標の目安
ピラーページの平均検索順位Search Console「検索パフォーマンス」→ ページでフィルタ → 平均掲載順位3か月で20位以内、6か月で10位以内
クラスター全体の合計クリック数Search Console「検索パフォーマンス」→ ページタブでクラスターのURLを合算月次で前月比10%以上の増加
インデックス済みページ数Search Console「ページ」→ クラスターURLがすべて「登録済み」になっているか公開後2週間以内に全ページインデックス
表示回数の推移Search Console「検索パフォーマンス」→ 表示回数の折れ線グラフ右肩上がりの傾向

ユーザー行動の指標(GA4)

KPI計測方法改善の方向性
ピラーページ経由のクラスターページ遷移率GA4「探索」→ 経路分析でピラーページ起点の遷移先を確認30%以上を目標に、内部リンクの配置を見直す
クラスター内回遊セッション数GA4でクラスターURL群をページグループに設定 → セッション数を集計クラスター内で2ページ以上閲覧するセッションの割合を追跡
コンバージョン貢献度GA4「アトリビューション」→ コンバージョン経路にクラスターページが含まれる割合クラスターページがCVに貢献しているか確認

コンテンツカバレッジの指標

KPI確認方法理想値
キーワードカバー率当初リストアップしたサブキーワードのうち、クラスターページが作成済みの割合80%以上
内部リンク設置率クラスターページからピラーページへのリンクが設置されている割合100%
孤立ページ(オーファンページ)の数Screaming Frog等のクローラーツールでサイト内リンクが0のページを検出0件

設計の具体例――「SEO対策」をコアトピックにしたクラスター設計

ここでは「SEO対策」をコアトピックにしたトピッククラスターの設計例を示します。

ピラーページ

  • タイトル: 「SEO対策の基本と実践手順」
  • メインキーワード: SEO対策(月間検索ボリューム: 27,100)
  • 内容: SEOの定義、検索エンジンの仕組み、内部対策・外部対策・コンテンツ対策の概要、ツール紹介、効果測定の全体像

クラスターページ一覧

No.クラスターページのテーマメインキーワード検索意図
1キーワード選定の方法SEO キーワード選定手順を知りたい
2タイトルタグの最適化SEO タイトル 付け方具体的なコツを知りたい
3内部リンク設計内部リンク SEO効果と張り方を知りたい
4被リンク獲得の方法被リンク 増やし方実践テクニックを知りたい
5ページ表示速度の改善サイト速度 SEO技術的な改善方法を知りたい
6構造化データの実装構造化データ SEOリッチリザルト獲得方法を知りたい
7モバイル対応モバイルフレンドリー SEO対応手順を知りたい
8コンテンツリライトの方法SEO リライト既存記事の改善方法を知りたい
9Google Search Consoleの使い方サーチコンソール 使い方ツールの操作方法を知りたい
10E-E-A-Tの高め方E-E-A-T SEOGoogleの評価基準を知りたい

内部リンク設計図

                    ┌──── クラスター1: キーワード選定
                    ├──── クラスター2: タイトルタグ
                    ├──── クラスター3: 内部リンク ←→ クラスター4
  ピラーページ ←→──┤
  「SEO対策」       ├──── クラスター5: 表示速度 ←→ クラスター7
                    ├──── クラスター6: 構造化データ
                    ├──── クラスター8: リライト ←→ クラスター1
                    ├──── クラスター9: サーチコンソール
                    └──── クラスター10: E-E-A-T

ピラーページと各クラスターページは必ず双方向リンクで接続します。加えて、内容が強く関連するクラスター同士(例: 「内部リンク設計」と「被リンク獲得」、「キーワード選定」と「リライト」)は横方向にもリンクします。

この設計で重要なのは、各クラスターページの検索意図が重複しないことです。「キーワード選定」と「リライト」はどちらもキーワードに関わりますが、前者は新規記事作成前の調査、後者は既存記事の改善と、検索意図が明確に異なります。

よくある失敗パターンと対処法

失敗1: ピラーページとクラスターページの粒度が合っていない

ピラーページが狭すぎるテーマ(例: 「titleタグの書き方」)だと、クラスターページが2〜3本しか作れず、クラスターとしての効果が薄くなります。逆にピラーページが広すぎるテーマ(例: 「Webマーケティング」)だと、クラスターページが50本以上必要になり、管理が破綻します。

対処法: ピラーページのテーマは「クラスターページが8〜15本程度になる粒度」を目安にします。キーワード調査の段階で関連キーワードの数を確認し、テーマの広さを調整します。

失敗2: 内部リンクの設置漏れ

クラスターページを作成したのに、ピラーページからのリンクを張り忘れたり、クラスターページからピラーページへのリンクを入れ忘れたりするケースは非常に多い失敗です。リンクが切れたクラスターは、Googleにとって単なるバラバラの記事と変わりません。

対処法: Screaming Frog、Ahrefs Site Auditなどのクローラーツールで定期的に内部リンクの状態を監査します。クラスターページの公開チェックリストに「ピラーページへのリンク確認」を必ず含めます。

失敗3: クラスターページ間でキーワードが重複している

「SEO キーワード 選び方」と「SEO キーワード 選定方法」のように、検索意図がほぼ同じ記事を別々に作ると、キーワードカニバリゼーションが発生します。

対処法: クラスターページの設計段階で、各キーワードの検索結果(SERP)を実際に確認します。検索結果の上位10件のURLが8割以上重複していれば、そのキーワードは同一ページで扱うべきです。

失敗4: クラスターを作って放置している

トピッククラスターは作って終わりではありません。検索トレンドの変化、競合の新規記事、Googleのアルゴリズム更新により、クラスター全体のパフォーマンスは変動します。

対処法: 四半期に1回、次のメンテナンスを行います。

  1. Search Consoleで各ページの検索順位とクリック数の推移を確認
  2. 順位が下落したページはコンテンツの鮮度・正確性を見直し、リライトする
  3. 新たに発生したサブキーワードがあれば、クラスターページを追加する
  4. 内部リンクの切れ・設置漏れがないかクローラーで監査する

失敗5: 1つのクラスターに全リソースを投下してしまう

最初から大規模なクラスター(30本以上)を一度に構築しようとすると、記事の品質が低下し、結果として検索評価も上がりません。

対処法: 最初のクラスターは8〜10本程度に絞り、3か月間の効果を測定します。成果が確認できたら、次のコアトピックで2つ目のクラスターを構築します。段階的に拡張していくことで、品質を維持しながらサイト全体のトピカルオーソリティを高められます。

まとめ――1つのクラスターから始める

トピッククラスターは、ピラーページ・クラスターページ・内部リンクの3要素でサイトの専門性を構造的に示すSEO戦略です。個別記事の最適化だけでは得られない「テーマ全体での検索評価の底上げ」を実現できます。

導入のハードルは低く、既存記事にピラーページを1本追加し、関連記事との内部リンクを整備するだけで始められます。重要なのは、最初から完璧なクラスターを目指すのではなく、1つのコアトピックから小さく始めて効果を測定し、データに基づいて拡張していくことです。

サイロ構造のようなディレクトリ変更を伴う大がかりな施策と異なり、トピッククラスターはコンテンツとリンクの追加だけで実現できます。まずは自社にとって最も重要なテーマを1つ選び、本記事で示した5ステップに沿って設計を始めてみてください。