サイテーションの定義と基本概念

サイテーション(citation)は英語で「引用・言及」を意味する語です。SEOの文脈では、自社サイトへのリンクを伴わずに、企業名・店舗名・サービス名・住所・電話番号などがWeb上で記載されている状態を指します。

たとえば、口コミサイトに店舗名と住所が掲載されている、SNSの投稿でサービス名が言及されている、業界メディアの記事中にブランド名が登場する——これらはすべてサイテーションに該当します。

被リンク(バックリンク)がHTMLの<a>タグによるクリック可能なリンクであるのに対し、サイテーションはリンクの有無を問いません。テキストとして名前や情報が存在しているだけで成立する点が最大の違いです。

サイテーションと被リンクの違いを正確に理解する

サイテーションと被リンクは混同されやすい概念ですが、評価の仕組みが根本的に異なります。

観点サイテーション被リンク
形式テキストによる名称・情報の記載HTMLの<a>タグによるハイパーリンク
リンクの有無不要必須
Googleの評価経路エンティティ認識・知名度シグナルPageRank・リンクジュース
主な効果範囲ローカルSEO(MEO)で特に強いオーガニック検索全般
獲得難易度比較的低い(口コミ・SNS言及含む)高い(サイト運営者の意図的な設置が必要)
不正操作リスク低い(大量の自然言及は操作しにくい)高い(リンクスパムの歴史あり)

被リンクはGoogleのPageRankアルゴリズムを通じてページの評価を直接的に高めます。一方、サイテーションはエンティティ(実体)の存在証明として機能します。複数の信頼できるサイトで同一の店舗情報が確認できれば、Googleはその事業者の実在性と知名度を高く評価します。

SEOにおけるサイテーションの効果

直接的なランキングシグナルとしての位置づけ

Googleはサイテーションが検索順位に影響するかどうかについて、明確な公式声明を出していません。ただし、Googleビジネスプロフィールのヘルプページでは、ローカル検索結果の表示順位を決める要素として**「知名度(Prominence)」**を挙げています。公式ヘルプには以下の記載があります。

“Prominence is also based on information that Google finds across the web, like links, articles, and directories.” (知名度は、リンク、記事、ディレクトリなど、Google がウェブ全体で見つける情報にも基づいています)

出典: Google ビジネスプロフィール ヘルプ

Whitesparkが47名の専門家を対象に実施した「2026 Local Search Ranking Factors」調査によると、ローカルパック/マップにおけるサイテーションシグナルの影響度は6%です。GBPシグナル(32%)やレビューシグナル(20%)と比べると小さいものの、ローカルオーガニック検索では7%、AI検索の可視性に至っては**13%**と倍増しており、無視できない要因です。

出典: Whitespark 2026 Local Search Ranking Factors

BrightLocalが実施した専門家調査では、ローカルSEO専門家の90%が「正確なサイテーションは検索順位に重要」と回答しています。一方で59%は「1年前と比べてサイテーションの重要度は下がった」とも回答しており、被リンクや口コミと比べると優先度が変化している点には留意が必要です。

出典: BrightLocal Expert Local Citation Survey

E-E-A-Tとの関連性

Googleの検索品質評価ガイドラインが定めるE-E-A-T(Experience, Expertise, Authoritativeness, Trustworthiness)の中で、**Authoritativeness(権威性)**の評価にサイテーションが間接的に寄与します。

第三者メディアや専門サイトでブランド名が頻繁に言及されている状態は、その事業者が業界内で認知されていることの証拠となります。Google検索品質評価ガイドライン(2025年9月11日更新版)では、評価者に対して「独立したレビュー、参考文献、専門家による推薦、ニュース記事、その他の信頼できる情報源」を調査するよう指示しています。さらに、Webサイト自身の主張と独立した外部情報源が矛盾する場合は、外部情報源を信頼するよう明記されています。

出典: Google検索品質評価ガイドライン

サイテーションが多いほど、この評判調査でポジティブな情報が見つかりやすくなります。E-E-A-Tの中でも権威性は「他者がそれを認めている」ことで成立する要素であり、自己申告ではカウントされません。第三者からの言及の蓄積こそが権威性を裏付けるシグナルとなります。

MEO(ローカルSEO)での効果が特に顕著

Googleマップやローカルパック(検索結果に表示される地図付きの店舗リスト)の順位決定において、サイテーションはより直接的な影響を持ちます。

ローカル検索の順位は、Googleの公式説明によると以下の3要素で決まります。

  1. 関連性(Relevance): 検索語句とビジネスプロフィールの一致度
  2. 距離(Distance): 検索者の位置からの物理的な近さ
  3. 知名度(Prominence): 事業者の認知度

サイテーションは3番目の「知名度」に直結します。業界ディレクトリ・ポータルサイト・口コミサイトなど、複数のプラットフォームにNAP情報(後述)が正確に掲載されていると、Googleはその事業者を「よく知られた存在」と判断しやすくなります。

サイテーションに含まれる情報の種類

サイテーションとして評価される情報は、大きく4つのカテゴリに分かれます。

1. 事業者の正式名称

法人名・屋号・店舗名・個人事業主名など、事業体を識別する固有名詞です。「株式会社○○」と「○○」のように表記ゆれがあると、Googleが同一事業者として認識できない場合があります。

2. 所在地・連絡先情報(NAP)

NAP(Name, Address, Phone number)は、サイテーションの中核をなす情報セットです。これらが複数のWebサイトで一貫して記載されていると、Googleはその事業者の信頼性を高く評価します。

BrightLocalの調査では、NAP情報の不一致が事業者に与える影響が数値で示されています。

  • 80%の消費者が、一貫性のない連絡先情報を見つけるとその事業者への信頼を失う
  • 93%の消費者が、オンラインディレクトリの不正確な情報に不満を感じている
  • NAP情報が一貫しているビジネスは、ローカルパックに表示される確率が40%高い

出典: BrightLocal

NAP情報の正確性は、SEO効果だけでなく実際の集客にも直結します。

3. 商品名・サービス名・ブランド名

提供している商品やサービスのブランド名が第三者サイトで言及されることも、サイテーションの一形態です。レビューサイトでの商品名の登場や、比較記事でのサービス名の記載がこれに当たります。

4. リンクを伴わないURL記載

テキストとしてURLが書かれているものの、<a>タグで囲まれていないケースです。掲示板やPDF資料、紙媒体のデジタル版などで見られます。Googleはこのようなテキスト上のURLもエンティティ情報として認識できます。

サイテーションの2つの形態

サイテーションは「構造化サイテーション」と「非構造化サイテーション」に分類されます。

構造化サイテーション

事業者情報が決まったフォーマットで整理されているものです。

  • Googleビジネスプロフィール
  • 食べログ、ホットペッパーなどのポータルサイト
  • 業界別ディレクトリサイト(弁護士ドットコム、エキテンなど)
  • iタウンページ、Yahoo!ロコなどの企業情報サイト

BrightLocalの調査では、ローカルSEO専門家の64%が業種別・地域特化型のディレクトリを優先すべきと回答しており、汎用的な大手ディレクトリよりも業界関連性の高いサイトへの掲載が重視される傾向にあります。

非構造化サイテーション

ブログ記事・ニュース記事・SNS投稿・フォーラムの書き込みなど、自由なテキストの中で事業者情報が言及されるケースです。形式が統一されていないため管理は難しいものの、自然発生的な言及が多いほど知名度シグナルとしての信頼性が高まります。

サイテーションを獲得するための実践ステップ

ステップ1: NAP情報を確定・統一する

すべてのサイテーション施策の土台となるのが、NAP情報の確定と統一です。

統一すべき項目と注意点:

項目よくある不統一の例統一後の正しい表記
名称「(株)ABC」「株式会社ABC」「ABC」「株式会社ABC」に統一
住所「東京都港区赤坂1-1-1」「港区赤坂一丁目1番1号」表記を1つに決定
電話番号「03-1234-5678」「0312345678」ハイフン付きに統一
URL「https://example.com」「https://www.example.com/」末尾スラッシュ・www有無を統一

まず自社の公式サイトに記載しているNAP情報を「正」として確定し、すべての外部プラットフォームをこの表記に合わせます。

ステップ2: Googleビジネスプロフィール(GBP)を最適化する

MEO対策の起点として、GBPの情報を充実させます。

  • ビジネス名・住所・電話番号・営業時間を正確に入力
  • カテゴリを適切に選択(メインカテゴリ+サブカテゴリ)
  • 写真を定期的に追加(外観・内装・商品・スタッフなど)
  • 投稿機能で最新情報を発信
  • 口コミへの返信を行う(ポジティブ・ネガティブ問わず)

ステップ3: 主要ディレクトリ・ポータルサイトに登録する

業種やターゲット地域に合わせて、関連性の高いプラットフォームに登録します。

業種別の推奨登録先(例):

業種推奨プラットフォーム
飲食店食べログ、ぐるなび、Retty、ホットペッパーグルメ
美容・サロンホットペッパービューティー、minimo、楽天ビューティ
医療・クリニックEPARK、Caloo、病院なび
士業(弁護士・税理士)弁護士ドットコム、税理士ドットコム、マネーフォワード クラウド
不動産SUUMO、HOME’S、アットホーム
EC・通販楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピング
全業種共通iタウンページ、Yahoo!ロコ、エキテン、Yelp

BrightLocalの調査では、新規事業者が最初の2か月間で目指すべきサイテーション数は平均35件、中央値は21〜30件とされています。ただし、競合の掲載状況をベンチマークとして、同等以上の掲載数を確保することが推奨されます。

ステップ4: SNSの公式アカウントを整備・運用する

X(旧Twitter)、Instagram、Facebook、LINEなどの公式アカウントを開設し、プロフィール欄にNAP情報を正確に記載します。SNSでの投稿は非構造化サイテーションを自然に生み出す発信源となります。

ユーザーがSNS上で事業者名やサービス名に言及する(=UGCとしてのサイテーション)ことで、知名度シグナルが蓄積されます。

ステップ5: プレスリリースを活用する

PR TIMESやValuePress!などのプレスリリース配信サービスを通じて、新サービスのリリース、イベント開催、調査データの公表などを発信します。プレスリリースは多くのニュースサイトに転載されるため、短期間で多数のサイテーションを獲得できる手段です。

ステップ6: 構造化データでNAP情報を検索エンジンに明示する

自社サイトにJSON-LD形式の構造化データを実装することで、検索エンジンがNAP情報を正確に理解しやすくなります。以下はLocalBusinessスキーマの実装例です。

{
  "@context": "https://schema.org",
  "@type": "LocalBusiness",
  "name": "株式会社サンプル 渋谷店",
  "image": "https://example.com/images/storefront.jpg",
  "address": {
    "@type": "PostalAddress",
    "streetAddress": "渋谷区道玄坂1-1-1",
    "addressLocality": "渋谷区",
    "addressRegion": "東京都",
    "postalCode": "150-0043",
    "addressCountry": "JP"
  },
  "telephone": "+81-3-1234-5678",
  "url": "https://example.com/shibuya",
  "openingHoursSpecification": [
    {
      "@type": "OpeningHoursSpecification",
      "dayOfWeek": ["Monday","Tuesday","Wednesday","Thursday","Friday"],
      "opens": "09:00",
      "closes": "18:00"
    }
  ],
  "geo": {
    "@type": "GeoCoordinates",
    "latitude": 35.65858,
    "longitude": 139.70135
  },
  "sameAs": [
    "https://www.facebook.com/example",
    "https://twitter.com/example",
    "https://www.instagram.com/example"
  ]
}

出典: Google Search Central - Local Business Structured Data

@typeにはLocalBusinessのサブタイプ(RestaurantDentistLegalServiceなど)を指定すると、より正確に業種を伝えられます。sameAsプロパティにSNSの公式アカウントURLを列挙することで、エンティティの関連付けが強化されます。

ステップ7: 良質なコンテンツとサービスで自然言及を増やす

テクニカルな施策を積み重ねても、根本的に「言及したくなる事業者」でなければ持続的なサイテーション獲得は困難です。

  • 業界の課題を解決するオリジナルの調査データやホワイトペーパーを公開する
  • ユーザーに価値を提供する無料ツールやテンプレートを配布する
  • 独自性のあるサービス体験を設計し、口コミが生まれやすい仕組みを作る

サイテーションの獲得状況を調べる方法

方法1: Google検索のマイナス検索を使う

自社名を引用符で囲み、自社サイトを除外して検索します。

"株式会社サンプル" -site:example.com

検索結果に表示されるページが、自社以外のサイトで自社名が言及されている(=サイテーションが存在する)ページです。定期的に検索して件数の推移を追跡すると、施策の効果測定に役立ちます。

方法2: Yahoo!リアルタイム検索でSNS上の言及を確認する

Yahoo!リアルタイム検索では、X(旧Twitter)上の投稿をリアルタイムに検索できます。自社名・サービス名で検索し、どのような文脈で言及されているかを確認します。

方法3: Google Search Consoleで指名検索数を確認する

Google Search Consoleの「検索パフォーマンス」レポートで、自社名・ブランド名での検索クエリの表示回数とクリック数を確認します。サイテーションが増えれば、ブランド名の検索(指名検索)も増加する傾向があります。指名検索数の推移は、サイテーション施策の間接的な効果指標として有効です。

ネガティブサイテーションへの対処

SNSや口コミサイトでの否定的な言及は、ブランドイメージの低下だけでなく、SEO評価にも悪影響を及ぼす可能性があります。

対応の基本方針

  1. 事実確認を最優先にする: 指摘内容が事実かどうかを冷静に検証する
  2. 正当な批判には真摯に対応する: サービス改善に取り組み、改善後にその旨を公開する
  3. 誤情報には訂正を依頼する: サイト運営者に連絡し、誤った情報の修正を求める
  4. Googleの削除ポリシーに該当する場合は報告する: 虚偽の口コミ、スパム、不適切なコンテンツはGoogleのポリシー違反として報告できる

根本的な対策は、ネガティブな言及を削除することではなく、ポジティブなサイテーションの総量を増やしてネガティブな情報の影響を相対的に薄めることです。

サイテーション施策の注意点

自作自演はペナルティリスクがある

自分で作成した複数のサイトやアカウントから意図的にサイテーションを量産する行為は、Googleのガイドラインに抵触します。不自然なパターンが検出された場合、ローカル検索での順位低下やGBPの停止といったペナルティを受ける可能性があります。

NAP情報の変更時は全プラットフォームを更新する

移転や電話番号変更の際、一部のサイトだけ更新して他を放置すると、情報の不一致が発生します。登録済みのすべてのプラットフォームで一括更新を行い、情報の一貫性を維持してください。変更前に、自社情報を登録しているサイトのリストを管理しておくと、漏れを防げます。

サイテーション数だけを追わない

掲載数を増やすことに集中するあまり、関連性の低いディレクトリに手当たり次第に登録するのは逆効果です。BrightLocalの調査でも、専門家の64%が「業界関連性の高いサイテーションを優先すべき」と回答しています。質の低い大量登録よりも、業界との関連性が高く、ドメインオーソリティの高いサイトへの掲載が効果的です。

AI検索時代におけるサイテーションの展望

GoogleのAI Overview(旧SGE)やBingのCopilot、ChatGPT、Perplexityなど、AI生成による検索回答が急速に普及しています。Gartnerは2026年までに従来の検索エンジン利用量が25%減少すると予測しています。

AI検索ではサイテーションの重要性が倍増する

Whitesparkの「2026 Local Search Ranking Factors」調査で注目すべきは、検索タイプごとにサイテーションの影響度が異なる点です。

検索タイプサイテーションシグナルの影響度
ローカルパック/マップ6%
ローカルオーガニック7%
AI検索の可視性13%

出典: Whitespark 2026 Local Search Ranking Factors

ローカルパックでは6%にとどまるサイテーションシグナルが、AI検索の可視性では13%と倍以上に跳ね上がっています。AI検索エンジンは1つの回答で2〜7件のソースしか引用しないため、「信頼できるエンティティ」として認識されることの価値がより高まります。

AI検索で引用されるための条件

AI Overviewの引用の97%は、既にオーガニック検索で上位20位以内にランクインしているページから選ばれています。AI検索で引用されたブランドは、オーガニッククリックが35%増加し、有料広告のクリックも91%増加するというデータもあります。

出典: Seer Interactive / Dataslayer

複数の信頼できるサイトで一貫した情報が掲載されている事業者は、AIが回答を生成する際の情報源として選ばれやすくなります。サイテーションによるエンティティの確立は、従来のSEOだけでなく、AI検索時代の可視性確保においても重要な施策です。

サイテーション獲得チェックリスト

自社のサイテーション施策の進捗を確認するためのチェックリストです。

  • NAP情報(名称・住所・電話番号・URL)の正式な表記を確定した
  • Googleビジネスプロフィールを登録・最適化した
  • 自社サイトにLocalBusinessの構造化データ(JSON-LD)を実装した
  • 業界関連のディレクトリ・ポータルサイトに10件以上登録した
  • 主要SNS(X、Instagram、Facebook)の公式アカウントにNAPを記載した
  • 既存の掲載情報にNAPの不一致がないか確認した
  • Google検索のマイナス検索で現在のサイテーション数を把握した
  • 競合のサイテーション掲載先を調査し、未登録のプラットフォームを特定した
  • プレスリリースやメディア掲載の年間計画を策定した
  • Google Search Consoleで指名検索数の推移を定期的に確認する体制を作った