検索流入はあるのにCVが出ない――その原因はキーワード選定にある
「記事を量産しているのに問い合わせが増えない」「検索順位は上がったのにコンバージョンにつながらない」。SEO担当者が抱えるこうした悩みの大半は、キーワード選定の段階で方向を誤っていることに起因します。
SEOにおけるキーワード選定とは、単に検索ボリュームが大きい語句を選ぶ作業ではありません。ユーザーが検索窓に打ち込む言葉の裏にある「検索意図」を正確に読み解き、自社のビジネスゴールと合致するキーワード群を体系的に設計するプロセスです。検索ボリューム・検索意図・競合難易度・収益性の4要素を総合的に評価しなければ、いくら良質なコンテンツを作っても成果にはつながりません。
なぜキーワード選定がSEO施策の成否を分けるのか
SEO施策の投資対効果はキーワード選定の精度で大きく変わります。その理由は3つあります。
1. コンテンツの方向性が確定する
記事のテーマ・構成・訴求ポイントはすべてターゲットキーワードから逆算して決まります。キーワードが曖昧なまま執筆すると、検索意図とコンテンツの内容にズレが生じ、Googleからの評価が得られません。
2. 集客とCVの接続点になる
たとえば「転職 おすすめ」で流入したユーザーと「看護師 転職エージェント 比較」で流入したユーザーでは、購買・申込みへの距離が全く異なります。後者のような具体的なキーワードを意図的に選定することで、CVに近いユーザーを効率よく集められます。
3. 制作リソースの最適配分につながる
検索ボリュームが月間10万のビッグキーワードを狙えば確かにポテンシャルは大きいですが、大手メディアがひしめく市場で新規サイトが上位表示するのは現実的ではありません。キーワード選定の段階で「勝てる市場」を見極めることで、限られたリソースを最大効率で投下できます。
キーワードの体系的分類:ボリューム軸と意図軸の2次元整理
キーワードを正しく分類できなければ、優先度判断を誤ります。ここではボリューム別と検索意図別の2つの軸で整理します。
ボリューム別の3分類
| 分類 | 月間検索ボリューム目安 | 特徴 | 例 |
|---|---|---|---|
| ビッグキーワード | 1万以上 | 競合が非常に多く上位表示は困難。サイト全体のテーマ設計に使用 | 「転職」「SEO」 |
| ミドルキーワード | 1,000〜1万 | 競合は多いが特定テーマに絞れば勝機あり。カテゴリページ向き | 「SEO キーワード選定」「転職 30代」 |
| ロングテールキーワード | 1,000未満 | 競合が少なくCV率が高い。個別記事で狙う中心ターゲット | 「看護師 転職 夜勤なし 東京」 |
検索意図別の4分類
| 意図タイプ | ユーザーの状態 | キーワード例 | CVへの近さ |
|---|---|---|---|
| 情報収集型(Informational) | 知識を得たい | 「SEOとは」「キーワード選定 やり方」 | 遠い |
| 比較検討型(Commercial) | 選択肢を絞りたい | 「SEOツール 比較」「Ahrefs ラッコキーワード 違い」 | やや近い |
| 行動型(Transactional) | 購入・申込みしたい | 「Ahrefs 申し込み」「SEOコンサル 依頼」 | 非常に近い |
| 指名型(Navigational) | 特定サイトに行きたい | 「ラッコキーワード ログイン」「Google Search Console」 | 対象外(自社指名のみ対応) |
検索意図マトリクス:ボリュームと意図を掛け合わせる
キーワード選定で最も効果的なのは、この2軸を掛け合わせた「検索意図マトリクス」を作成することです。以下にスプレッドシートで管理する際の列構成を示します。
| キーワード | 月間検索ボリューム | ボリューム分類 | 検索意図 | 競合難易度(1-5) | 自社関連度(1-5) | CV貢献度(1-5) | 優先度スコア | 対応コンテンツ | ステータス |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| SEO キーワード選定 | 720 | ミドル | 情報収集 | 4 | 5 | 3 | B | /blog/seo-keyword | 未着手 |
| SEOツール 比較 無料 | 320 | ロングテール | 比較検討 | 3 | 4 | 4 | A | /blog/seo-tools | 未着手 |
優先度スコアは「自社関連度 + CV貢献度 - 競合難易度」で簡易算出できます。スコアが高いものから着手することで、限られたリソースで最大の成果を狙えます。
実践キーワード選定プロセス:6ステップで完全実行
ここからは「転職」ジャンルを例に、具体的な選定手順を解説します。
Step1. ビジネスゴールから軸キーワードを決める
最初に行うのは、検索ボリュームの確認ではなく「何を売りたいか」の明確化です。
たとえば転職エージェントを運営している場合、ゴールは「エージェント登録の獲得」です。ここから逆算すると、軸キーワードは「転職」ではなく「転職エージェント」になります。さらに自社の強みが看護師向けなら「看護師 転職」が軸キーワードです。
軸キーワードを決める際のチェックポイントは以下の3つです。
- 自社サービスとの関連性が明確か
- 月間検索ボリュームが1,000以上あるか
- そのキーワードで上位表示したとき、CVにつながるイメージがあるか
Step2. サジェスト・関連語を網羅的に収集する
軸キーワードが決まったら、そこから派生するキーワードを徹底的に洗い出します。使うツールと収集元は以下のとおりです。
- Googleサジェスト: 検索窓に入力すると表示される候補語
- ラッコキーワード: サジェストを一括取得できる無料ツール(公式サイト)
- Google検索の「関連する検索」: 検索結果ページ下部に表示される関連語
- Googleキーワードプランナーの「新しいキーワードを見つける」機能
- 競合サイトの流入キーワード: AhrefsやSemrushで取得
「看護師 転職」を軸にした場合、「看護師 転職 夜勤なし」「看護師 転職サイト おすすめ」「看護師 転職 志望動機」など、数百〜数千のキーワード候補が集まります。この段階では取捨選択せず、可能な限り網羅的に収集してください。
Step3. 検索ボリュームと競合度を数値で把握する
収集したキーワードに対して、検索ボリュームと競合度のデータを付与します。
無料で調べる方法
Googleキーワードプランナーを使えば、Google広告アカウント(無料で作成可能)があれば検索ボリュームの概算を確認できます。ただし広告未出稿の場合は「100〜1,000」のような幅のある表示になる点に注意が必要です(Google広告ヘルプ)。
有料ツールで精度を上げる方法
AhrefsやSemrushであれば、正確な月間検索ボリュームに加え、キーワード難易度(KD)スコアが取得できます。KDスコアは上位表示に必要な被リンク数を基に算出される指標で、数値が低いほど上位表示しやすいことを意味します。
Step4. 検索意図でグルーピングする
ボリュームデータが揃ったら、前述の検索意図4分類に基づいてキーワードを仕分けます。
判定方法はシンプルです。実際にそのキーワードでGoogle検索を行い、上位10件のコンテンツが「知識解説系」「比較系」「商品ページ系」のどれかを確認します。上位表示されているコンテンツの種類がそのキーワードの検索意図そのものです。
たとえば「看護師 転職 志望動機」で検索すると、上位には志望動機の書き方・例文集が並びます。これは情報収集型です。一方「看護師 転職サイト おすすめ」では比較ランキング記事が上位を占めるため、比較検討型と判定できます。
同じ検索意図のキーワードは1つの記事でまとめて対応できます。「看護師 転職 志望動機 例文」「看護師 転職 志望動機 書き方」は別々の記事にせず、1記事に統合するのが正解です。
Step5. 収益性と難易度で優先順位を付ける
すべてのキーワードに均等にリソースを投下するのは非効率です。以下の2軸で優先順位を決定します。
収益性(CVへの距離)
- 高: 比較検討型・行動型のキーワード(例:「看護師 転職サイト 比較」)
- 中: 情報収集型だがサービス訴求が可能(例:「看護師 転職 時期」)
- 低: 情報収集型でサービスと直接関連しない(例:「看護師 やりがい」)
競合難易度
- 低: 検索上位に個人ブログやQ&Aサイトが多い
- 中: 中規模メディアが上位を占める
- 高: 大手企業サイトや公式サイトばかり
新規サイトや中小規模のサイトであれば、「収益性: 高〜中」かつ「難易度: 低〜中」のロングテールキーワードから着手するのが鉄則です。初期段階でビッグキーワードを狙うのは、リソースの浪費につながります。
Step6. コンテンツマップとして管理する
選定したキーワードを「コンテンツマップ」に落とし込み、サイト全体の設計図として活用します。
コンテンツマップでは、ピラーページ(軸となる包括的な記事)とクラスターコンテンツ(個別テーマの詳細記事)を明確に区別します。
例:「看護師 転職」のコンテンツマップ
- ピラーページ: 「看護師の転職完全ガイド」(軸キーワード:看護師 転職)
- クラスター1: 「看護師の転職サイトおすすめ比較」(看護師 転職サイト おすすめ)
- クラスター2: 「看護師の志望動機の書き方と例文集」(看護師 転職 志望動機)
- クラスター3: 「看護師が転職で失敗しないベストな時期」(看護師 転職 時期)
- クラスター4: 「夜勤なしで働ける看護師の職場一覧」(看護師 転職 夜勤なし)
各クラスターコンテンツからピラーページへ内部リンクを設置し、ピラーページからも各クラスターへリンクすることで、トピック全体の専門性をGoogleに伝えられます。
AI Overviews時代に求められるキーワード戦略の転換
2026年現在、Google検索結果の50%以上にAI Overviewsが表示されるようになり、SEOの前提条件が大きく変わっています(出典: Semrush AI Overviews調査)。調査会社Gartnerは2024年2月に、2026年までに従来型の検索エンジン利用が25%減少するという予測を発表しました(出典: Gartner公式プレスリリース)。この予測値に対しては懐疑的な見方もありますが、AIチャットボットの普及による検索行動の変化は確実に進行しています。
この変化がキーワード選定に与える影響は3点あります。
1. 単純な情報検索型キーワードのCTRが低下している
「〇〇とは」のようなシンプルな定義系クエリは、AI Overviewsが検索結果上部で直接回答を表示するため、オーガニック検索結果のクリック率が低下しています。1位表示でもCTRが平均34.5%低下したというデータもあります(出典: Stackmatix調査)。
2. 「引用される」コンテンツが優位になる
AI Overviewsは回答生成時にWebページの情報を引用します。つまり「クリックされる」だけでなく「AIに引用される」ことが新たな流入経路になっています。引用されやすいコンテンツの特徴は、一次データの掲載・明確な構造化・E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)の充実です。
3. ロングテール・複合キーワードの価値が相対的に上昇している
AI Overviewsは単純な質問に対しては直接回答しますが、複数の条件を含む複雑なクエリや、比較検討・意思決定を伴うクエリではまだ十分な回答を返せません。「看護師 転職 夜勤なし 東京 年収500万」のような具体的で複合的なキーワードは、従来以上に重要性を増しています。
対策として取り入れるべきこと
- 独自調査・独自データを含むコンテンツを優先的に制作する
- 構造化データ(FAQ・HowToスキーマ)を積極的に実装する
- 単一記事ではなくトピッククラスター全体で専門性を構築する
- 情報検索型だけでなく、比較検討型・行動型キーワードの比率を高める
実務で使えるキーワード選定ツール厳選6選
競合サイトでは15個以上のツールを羅列している記事が多いですが、実際にキーワード選定で必要なツールは目的別に絞ると6つで十分です。
無料ツール3選
| ツール名 | 主な用途 | 特徴 |
|---|---|---|
| Googleキーワードプランナー | 検索ボリューム調査 | Google公式のデータで信頼性が高い。広告未出稿だとボリュームが概算表示になる制限あり |
| ラッコキーワード | サジェスト一括取得 | 無料でもサジェスト・関連語を一括取得可能。有料プラン(月額440円〜)で検索ボリューム表示にも対応(料金プラン) |
| Google Search Console | 既存サイトの流入キーワード確認 | 自サイトが実際に表示・クリックされているキーワードを把握できる。新規キーワード発掘ではなく既存キーワードの分析向き |
有料ツール3選
| ツール名 | 月額料金目安 | 主な用途 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| Ahrefs | 約$99〜/月 | 競合分析・キーワード難易度調査 | キーワードエクスプローラーで難易度スコア(KD)と被リンクデータを一元管理。競合サイトの流入キーワードも把握可能(ITreview料金情報) |
| Semrush | $119.95〜/月(Proプラン) | オールインワン分析 | キーワード調査に加え、コンテンツ最適化・広告分析・SNS管理まで対応。日本語対応済み(Semrush公式) |
| Ubersuggest | 月額2,999円〜(買い切り29,990円〜もあり) | 低コストでの検索ボリューム・競合調査 | 有料ツールの中では最も低価格。無料版は1日3回の制限あり(料金情報) |
選び方の指針: 月間制作記事数が10本未満の個人・小規模サイトなら「Googleキーワードプランナー+ラッコキーワード+Search Console」の無料3点セットで十分です。月間10本以上の制作体制があるチームや、競合サイトの流入キーワード分析まで行いたい場合はAhrefsかSemrushの導入を検討してください。
選定したキーワードの正しい配置ルール
キーワードを選定しただけでは上位表示できません。ページ内の適切な位置に自然な形で配置する必要があります。
配置すべき7つのポイント
| 配置場所 | 重要度 | 配置のコツ |
|---|---|---|
| titleタグ | 最重要 | 先頭30文字以内にメインキーワードを含める。PC・スマホの表示文字数を意識して30〜35文字に収める |
| H1タグ | 最重要 | titleタグとほぼ同一で問題なし。1ページに1つだけ設置する |
| メタディスクリプション | 高 | 120〜160文字でキーワードを自然に含める。検索結果でのCTRに影響する |
| H2・H3見出し | 高 | すべてのH2に無理に入れるのではなく、内容に合う見出しに自然に含める |
| 本文冒頭200文字 | 中 | リード文の中に自然な形で1回含める |
| 画像alt属性 | 中 | 画像の内容を説明する文にキーワードを含める |
| URL(スラッグ) | 低〜中 | 英語またはローマ字で簡潔にキーワードを反映させる |
メタキーワードについて
「メタキーワード(meta keywords)タグにキーワードを設定すべきか」という疑問がよくありますが、Googleは2009年の時点でメタキーワードをランキングシグナルとして使用していないと公式に明言しています。設定してもSEO効果はないため、作業工数を割く必要はありません。
キーワード選定で避けるべき3つの落とし穴
1. キーワードカニバリゼーション
同じキーワード(または検索意図が同一のキーワード)を複数の記事で狙ってしまうと、Googleがどのページを表示すべきか判断できず、結果としてすべてのページの順位が下がる現象です。
防止策: Step4のグルーピングを徹底し、1つの検索意図に対して1つのURLだけを対応させてください。既存サイトでカニバリが疑われる場合は、Search Consoleで同一キーワードに複数ページが表示されていないか確認し、記事の統合またはcanonical設定で対処します。
2. キーワードの過剰な詰め込み
キーワードを不自然に繰り返す手法は、Googleのスパムポリシーに明確に違反します。キーワード出現率を特定の数値(「3%が最適」等)に合わせるような調整も不要です。
正しいアプローチ: ユーザーにとって自然に読める文章を書いた結果、キーワードが適切に含まれている状態を目指します。同義語・共起語を活用することで、不自然な繰り返しを避けながらトピックの網羅性を高められます。
3. 検索意図と提供コンテンツのミスマッチ
検索ボリュームだけを見てキーワードを選び、検索意図を無視したコンテンツを作成する失敗パターンです。たとえば「キーワードプランナー」(月間22,200回)で検索するユーザーの大半はツールを使いたい人であり、「キーワードプランナーの歴史」を解説する記事を書いてもニーズに合いません。
防止策: Step4で解説した「実際に検索して上位10件を確認する」プロセスを必ず実行してください。上位表示されているコンテンツの形式(ハウツー・比較・一覧・ツール紹介など)と自社コンテンツの形式が一致しているかを確認することが重要です。
成果につなげるためのネクストアクション
キーワード選定は一度やって終わりではなく、継続的に改善するプロセスです。
まずは以下の3ステップから始めてください。
- 今週中: 自社のビジネスゴールから軸キーワードを3つ決め、ラッコキーワードでサジェストを一括取得する
- 来週中: 収集したキーワードをスプレッドシートに整理し、検索意図マトリクスを完成させる。検索ボリュームはGoogleキーワードプランナーで確認する
- 今月中: 優先度スコアの高いキーワードから5記事分のコンテンツマップを作成し、1記事目の制作に着手する
運用開始後はSearch Consoleで「表示回数はあるがクリック率が低いキーワード」を毎月確認してください。タイトルやメタディスクリプションの改善だけでCTRが倍増するケースも珍しくありません。また、3〜6か月ごとにキーワードの再評価を行い、検索ボリュームの変動や新たな関連キーワードの出現に対応することで、サイト全体のSEO成果を持続的に向上させられます。