Flutterでアプリを開発するには、SDK・エディタ・プラットフォームツールの3つを正しく導入する必要があります。特にパス設定やライセンス承認でつまずくケースが多く、手順を飛ばすと flutter doctor でエラーが連発します。Windows・macOS両方のセットアップ手順に加え、IDE選びやfvmによるバージョン管理まで順を追って整理しました。

Flutterの概要と開発に必要なもの

FlutterはGoogleが開発したオープンソースのUIフレームワークです。Dart言語を使い、1つのコードベースからiOS・Android・Web・デスクトップ(Windows / macOS / Linux)向けアプリを同時にビルドできます。

2026年2月時点の最新安定版は Flutter 3.41 / Dart 3.11 です。

環境構築で導入が必要なコンポーネントは以下のとおりです。

コンポーネント役割必須/任意
Flutter SDKフレームワーク本体(Dart同梱)必須
VS Code または Android Studioコードエディタ / IDEいずれか必須
Android SDK / エミュレータAndroid向けビルド・実行Android開発時
Xcode(Mac限定)iOS / macOS向けビルド・実行iOS開発時
CocoaPods(Mac限定)iOSネイティブ依存管理iOS開発時
Gitソース管理・SDK取得必須

OS別のシステム要件

Windows

項目要件
OSWindows 10 以降(64ビット)
ディスク空き2.5 GB 以上(IDE・エミュレータ含めると10 GB推奨)
メモリ8 GB 以上推奨
ツールGit for Windows、PowerShell 5.0以降

macOS

項目要件
OSmacOS 10.15 Catalina 以降
ディスク空き2.8 GB 以上(Xcode含めると25 GB推奨)
メモリ8 GB 以上推奨(16 GB推奨)
CPUIntel / Apple Silicon(M1〜M4)両対応
ツールGit、Xcode Command Line Tools

Apple Siliconの場合、Rosetta 2は不要です。Flutter SDKはネイティブ対応しています。

Flutter SDKの導入手順

Windowsの場合

手順1:Flutter SDKをダウンロードする

Flutter公式サイトにアクセスし、Windows用のSDKアーカイブ(zipファイル)をダウンロードします。

C:\src\flutter

上記のように C:\src\ 配下などスペースを含まないパスにzipを展開してください。C:\Program Files\ はアクセス権限の問題が起きやすいため避けます。

手順2:PATHを設定する

システム環境変数に Flutter SDK の bin ディレクトリを追加します。

  1. Windowsの検索バーで「環境変数」と入力し「システム環境変数の編集」を開く
  2. 「環境変数」ボタンをクリック
  3. ユーザー環境変数の Path を選択して「編集」
  4. 「新規」で C:\src\flutter\bin を追加
  5. 「OK」で閉じる

PowerShellを新しく開いて、以下のコマンドで確認します。

flutter --version

バージョン情報が表示されれば成功です。

手順3:Git for Windowsを確認する

Gitが未インストールの場合、Git公式サイトからダウンロードしてインストールしてください。

git --version

macOSの場合

手順1:Homebrewで前提ツールを準備する

ターミナルを開き、Homebrewがインストール済みか確認します。

brew --version

未導入の場合は以下を実行します。

/bin/bash -c "$(curl -fsSL https://raw.githubusercontent.com/Homebrew/install/HEAD/install.sh)"

手順2:Flutter SDKをダウンロードする

公式サイトからmacOS用のSDKをダウンロードし、任意のディレクトリに展開します。

cd ~/development
unzip ~/Downloads/flutter_macos_arm64_3.41.0-stable.zip

手順3:PATHを通す

シェルの設定ファイルにFlutter SDKのパスを追加します。zshの場合は ~/.zshrc を編集します。

export PATH="$HOME/development/flutter/bin:$PATH"

設定を反映します。

source ~/.zshrc

確認コマンドを実行します。

flutter --version

エディタ・IDEの選択と設定

FlutterはVS Code・Android Studio・IntelliJ IDEAなど複数のIDEに対応しています。主要な選択肢の特徴を比較します。

比較項目VS CodeAndroid StudioCursor
動作の軽さ軽量やや重い軽量
FlutterプラグインFlutter拡張機能公式プラグインFlutter拡張機能
UIデザインツールなしLayout Inspectorなし
エミュレータ管理外部起動統合管理外部起動
リファクタリング支援基本的充実AI補完あり
推奨用途軽量な開発・Web開発Android/iOS本格開発AI支援を活用した開発

Android向けにエミュレータを頻繁に使う場合はAndroid Studioが便利です。軽快に動作するエディタを求める場合やWeb開発が中心の場合はVS Codeが適しています。

VS Codeの設定

  1. VS Code公式サイトからインストール
  2. VS Codeを起動し、拡張機能(Extensions)パネルを開く(Ctrl+Shift+X / Cmd+Shift+X
  3. 「Flutter」と検索し、Dart Code製の Flutter 拡張機能をインストール
  4. Dart拡張機能も自動でインストールされる

インストール後、コマンドパレット(Ctrl+Shift+P / Cmd+Shift+P)で Flutter: New Project と入力すると、プロジェクトのひな型を作成できます。

Android Studioの設定

  1. Android Studio公式サイトからダウンロード(2026年2月時点の最新安定版は Panda 1 / 2025.3.1
  2. 初期セットアップウィザードでAndroid SDKをインストール
  3. PluginsMarketplace で「Flutter」を検索してインストール(Dartプラグインも同時に入る)
  4. Flutter SDKのパスを設定:SettingsLanguages & FrameworksFlutter → SDK Pathに展開先を指定

Android開発環境の準備

Android SDKとコマンドラインツール

Android Studioをインストールすると、Android SDKは自動で導入されます。VS Codeのみで開発する場合は、Android Studioを「SDKマネージャとして」インストールするか、コマンドラインツールのみを導入します。

cmdline-toolsの追加

Android Studioの SDK ManagerSDK Tools タブで「Android SDK Command-line Tools (latest)」にチェックを入れてインストールします。

Androidライセンスの承認

以下のコマンドでライセンスに同意します。

flutter doctor --android-licenses

すべてのライセンスに y で承認してください。

エミュレータの作成

Android Studioの Device Manager からエミュレータ(AVD)を作成します。

  1. Create Virtual Device をクリック
  2. デバイス(例:Pixel 8)を選択
  3. システムイメージ(API Level 34以上推奨)をダウンロード・選択
  4. Finish で作成完了

作成したエミュレータはAndroid Studio内から起動でき、VS Codeからも flutter run コマンドで自動検出されます。

iOS開発環境の準備(macOS限定)

Xcodeのインストール

Mac App Storeから Xcode をインストールします。2026年2月時点ではXcode 26系が最新です(App Storeに表示されるバージョンをそのまま導入してください)。

インストール後、コマンドラインツールとライセンスを設定します。

sudo xcode-select -s /Applications/Xcode.app/Contents/Developer
sudo xcodebuild -license accept

CocoaPodsの導入

FlutterのiOSビルドではCocoaPodsが依存管理に使われます。Rubyの gem コマンドでインストールします。

sudo gem install cocoapods

Apple Silicon搭載Macの場合、以下のようにRubyのパス周りでエラーが出ることがあります。

# rbenvでRubyを管理している場合
rbenv install 3.3.0
rbenv global 3.3.0
gem install cocoapods

iOSシミュレータの起動確認

Xcodeのインストールが完了していれば、以下のコマンドでシミュレータを起動できます。

open -a Simulator

flutter doctorで環境を検証する

flutter doctor はFlutterの開発環境に不足しているツールや設定を自動診断するコマンドです。

flutter doctor

すべての項目にチェックマーク(✓)が付けば環境構築は完了です。

Doctor summary (to see all details, run flutter doctor -v):
[] Flutter (Channel stable, 3.41.0, on macOS 15.3)
[] Android toolchain - develop for Android devices (Android SDK version 35.0.0)
[] Xcode - develop for iOS and macOS (Xcode 26.x)
[] Chrome - develop for the web
[] Android Studio (2025.3)
[] VS Code (version 1.98)
[] Connected device (3 available)
[] Network resources

 No issues found!

よくあるエラーと対処法

エラーメッセージ原因対処法
Android license status unknownAndroidライセンス未承認flutter doctor --android-licenses を実行
cmdline-tools component is missingコマンドラインツール未導入SDK Managerからcmdline-toolsをインストール
CocoaPods not installedCocoaPods未導入sudo gem install cocoapods を実行
Xcode installation is incompleteXcodeセットアップ不完全sudo xcode-select --install でCLIツールを導入
Flutter SDK not foundPATHの設定ミス.zshrc または環境変数のPATH設定を見直す
Unable to find bundled Java versionAndroid StudioのJava問題Android Studioを最新版に更新

より詳細な診断結果を確認する場合は -v オプションを付けて実行します。

flutter doctor -v

プロジェクトの作成と動作確認

環境が整ったら、サンプルプロジェクトを作成して動作を確認します。

flutter create my_first_app
cd my_first_app
flutter run

flutter create はカウンターアプリのテンプレートを自動生成します。flutter run で接続中のデバイスまたはエミュレータ上にアプリが起動します。

Hot Reloadで変更を即反映

Flutterの大きな特徴の1つが Hot Reload です。アプリを実行したまま lib/main.dart を編集し、ターミナルで r キーを押すと、数秒以内に画面へ反映されます。アプリの再起動が不要なため、UIの微調整を高速に繰り返せます。

fvmでFlutterバージョンを管理する

複数のプロジェクトで異なるFlutterバージョンを使い分けるには、fvm(Flutter Version Management) が便利です。2026年2月時点の最新版は fvm 4.0.4 です。

fvmの導入

dart pub global activate fvm

macOSでHomebrew経由でもインストール可能です。

brew install leoafarias/fvm/fvm

プロジェクトにバージョンを固定する

# 使用可能なバージョンを確認
fvm releases

# 特定バージョンをインストール
fvm install 3.41.0

# プロジェクトで使うバージョンを指定
fvm use 3.41.0

fvm use を実行すると、プロジェクトルートに .fvmrc ファイルが生成されます。チームメンバーがリポジトリをクローンした際、fvm install だけで同じバージョンのSDKが入ります。

VS CodeでfvmのSDKパスを指定する

プロジェクトの .vscode/settings.json に以下を追加します。

{
  "dart.flutterSdkPath": ".fvm/flutter_sdk"
}

Android Studioの場合は SettingsLanguages & FrameworksFlutter で SDK Path を .fvm/flutter_sdk に変更します。

.gitignoreへの追記

fvmのシンボリックリンクはバージョン管理に含める必要がありません。

.fvm/flutter_sdk

Web・デスクトップ向けビルドの確認

FlutterはモバイルだけでなくWeb・デスクトップアプリの開発にも対応しています。Flutter 3.x系の安定版チャネルでは、Web・Windows・macOS・Linuxの各プラットフォームがデフォルトで有効です。

flutter devices で対応プラットフォームを確認できます。

flutter devices

各プラットフォーム向けの実行コマンドは以下のとおりです。

flutter run -d chrome    # Web版をChromeで実行
flutter run -d windows   # Windowsデスクトップ版を実行
flutter run -d macos     # macOSデスクトップ版を実行

万が一、特定のプラットフォームが無効になっている場合は flutter config で有効化できます。

flutter config --enable-web
flutter config --enable-windows-desktop
flutter config --enable-macos-desktop

まとめ

Flutterの環境構築は、Flutter SDK → エディタ設定 → プラットフォームツール → flutter doctor による検証の順に進めると効率的です。

構築のポイントを整理します。

  • SDKの展開先 はスペースを含まないパスを選ぶ
  • PATHの設定 を忘れると全コマンドが使えない
  • flutter doctor をこまめに実行して不足を確認する
  • fvm を使えばプロジェクト単位でバージョンを固定でき、チーム開発で差異が出にくい
  • Windows環境のみの場合でもAndroid Studioの導入が推奨される(Android SDKとエミュレータの管理が容易)
  • macOSでiOS開発を行う場合はXcodeとCocoaPodsの導入が必須

Flutter公式のインストールガイドも参照すると、最新の変更点を常に把握できます。