Rustのコンパイルが遅い原因と高速化テクニック完全ガイド【2026年版】
`` Rustプロジェクトの規模が大きくなるにつれ、cargo build の待ち時間がボトルネックになるケースは珍しくありません。Rust公式が2025年夏に実施した「Rust Compiler Performance Survey」では、ビルドパフォーマンスへの満足度が10段階中「6」にとどまり、「コンパイル時間の長さが生産性を下げている」という回答が多数を占めました。 Rustのコンパイルが遅くなる仕組みを正しく把握し、適切な対策を打てば、開発体験は大きく改善できます。 Rustのコンパイルが遅い3つの根本原因 LLVMバックエンドによる最適化コスト Rustコンパイラ(rustc)はソースコードをまずMIR(Mid-level Intermediate Representation)に変換し、その後LLVM IRへ変換してからLLVMに最適化とネイティブコード生成を委ねます。LLVMは高品質な最適化を行う反面、この処理には時間がかかります。 特にリリースビルド(--release)ではLLVMの最適化パスが多段に実行されるため、デバッグビルドの数倍の時間を要することもあります。cargo llvm-linesコマンドを使うと、LLVMが生成するIRの行数をクレート単位で確認でき、どの部分がLLVMの負荷を増大させているか特定できます。 ジェネリクスとモノモーフィゼーション Rustのジェネリクスは「モノモーフィゼーション」と呼ばれる方式で処理されます。ジェネリック関数が具体的な型引数で呼び出されるたびに、その型ごとの専用コードが生成される仕組みです。 たとえば fn process<T: Display>(value: T) が String、i32、Vec<u8> の3種類で呼ばれると、コンパイラは3つの独立した関数を生成します。大規模プロジェクトでは数百のインスタンスが生まれることもあり、コンパイル時間とバイナリサイズの両方に影響を及ぼします。 対策としては、ジェネリック関数の内部でも型に依存しない処理を非ジェネリックな内部関数に切り出す手法が有効です。 // 改善前: 全体がモノモーフィゼーションされる fn write_data<W: Write>(writer: &mut W, data: &[u8]) -> io::Result<()> { // 前処理(型に依存しない) let header = create_header(data.len()); validate_data(data)?; // 書き込み(型に依存する) writer.write_all(&header)?; writer.write_all(data)?; Ok(()) } // 改善後: 型に依存しない部分を分離 fn write_data<W: Write>(writer: &mut W, data: &[u8]) -> io::Result<()> { let prepared = prepare_write(data)?; // 非ジェネリック writer.write_all(&prepared.header)?; writer.write_all(prepared.data)?; Ok(()) } fn prepare_write(data: &[u8]) -> io::Result<PreparedData> { let header = create_header(data.len()); validate_data(data)?; Ok(PreparedData { header, data }) } リンク処理のボトルネック コンパイルの最終段階であるリンク処理も、大きな時間を消費する工程です。Rustプロジェクトは多数のクレートに依存するため、それらのオブジェクトファイルを結合するリンク処理が肥大化します。 ...